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家族信託と成年後見制度|目的の違いを徹底解説
2025年2月5日
家族信託と成年後見制度|目的の違いを徹底解説
高齢化社会において、高齢者の資産管理や意思決定のサポートが重要視されてきています。
家族信託と成年後見制度は、どちらも高齢者や認知症の方の財産管理に関わる制度ですが、目的や使い方に違いがあります。
本記事では、それぞれの制度の特徴や目的を分かりやすく解説します。
家族信託と成年後見制度
初めに、家族信託と成年後見制度について説明します。
1.家族信託とは
家族信託とは、信託法に基づき、老後の生活や介護に必要な資金を管理するなどの目的に沿って、保有する不動産や預貯金などの財産を信頼できる家族に託す制度です。
財産を託す人を「委託者」、託される人を「受託者」と呼び、基本的に委託者は信託財産から利益を受け取る「受益権」を有します。
信託契約については委託者と受託者との間で双方が納得のいく契約書を作成すれば、法的に有効となり、契約を締結した時点から効力が発生します。
2.成年後見制度とは
成年後見制度とは、認知症や知的障害、精神障害などで判断能力に不安がある人の財産管理を行う制度で、家庭裁判所が選任した後見人が財産の管理を行います。
成年後見制度は、判断能力はまだ十分だが将来の不安に備えるための「任意後見制度」と、加齢や障害により判断能力が既に不十分の人を支える「法定後見制度」とに分かれており、主に不動産や預貯金などの財産管理の他、介護・福祉サービスの利用契約や施設の入所契約などをサポートします。
家族信託と成年後見制度の比較
次に、家族信託と成年後見制度の目的の違いについて比較してみます。
家族信託と成年後見制度とでは、目的が異なります。
したがって、それぞれの制度には特徴や制限があるため、本人の意向や資産の状況に応じて適切な制度を選ぶことが重要です。
1.家族信託の目的
家族信託は、委託者が信頼できる子や孫などの家族を受託者に指定し、財産の管理や運用、処分を任せることが目的です。
成年後見制度と比較して信託契約の内容を自由に設定できるため、契約内容によっては不動産を売却した資金を活用して新たな建物を建設、運営といったことも可能であり、判断能力の低下に備えた財産管理以外にも、遺言に代わる相続や事業の承継などに活用することができます。
したがって、家族信託を利用する場合には、誰と何のために信託契約を結ぶのかという目的をはっきりさせておく必要があると言えます。
・財産管理の柔軟性:高い
・身上監護:なし
・財産管理の開始時期:信託契約で明記された日から
・裁判所の関与:なし
2.成年後見制度の目的
成年後見制度は、判断能力が低下した本人の資産を保護することが主な目的です。
そのため、後見人には財産の積極的な管理や運用、処分は許されず、基本的に本人の生活に必要と判断された場合に限り支出することができ、家族信託と比較して財産管理の柔軟性が低い反面、法的な安全性は高いと言えます。
また、後見人には本人の利益を第一に考えた財産管理が義務づけられており、本人のためにどのような保護や支援が必要かなどの事情に応じて後見人を選任するため、本人の親族ではなく、司法書士や弁護士といった法律の専門家、福祉関係の公益法人などが選ばれる場合があります。
そのため、専門家が後見人に選ばれた場合には報酬が発生することになります。
・財産管理の柔軟性:低い
・身上監護:あり(生活や療養看護の支援なども任せることが可能)
・財産管理の開始時期:原則として、判断能力が低下したときから
・裁判所の関与:あり
家族信託と成年後見制度のデメリット
最後に、それぞれのデメリットについて見ておきましょう。
1.家族信託のデメリット
家族信託のデメリットとして以下の点が挙げられます。
・身上監護(生活や健康、療養などに関する法律行為を行うこと)ができない
・初期費用が成年後見制度と比較して高額
家族信託は財産管理を主な目的としているため、受託者が介護サービスの利用や施設などの入所契約といった身上監護を代行することはできません。
また、信託契約の作成には法的知識が必要となり、司法書士や弁護士といった専門家のサポートが必要です。
そのため、信託財産の額に応じた専門家のコンサルティング費用がかかるなど、初期費用が高額になる場合があります。
2.成年後見制度のデメリット
成年後見制度のデメリットとしては以下の点が挙げられます。
・財産管理の柔軟性に欠けるため、本人の意向を反映しづらい場合がある
・後見人の申立手続きは時間と手間がかかる
・後見人に家族以外の第三者が選任された場合、報酬が発生する
成年後見制度は本人の財産を本人のために保護することが目的のため、財産の運用や処分を後見人は自由にすることができません。
たとえば、成年後見制度の利用にかかる費用や治療費など、必要な支出を資産運用でまかないたいと考えても、リスクの伴う積極的な資産運用は認められません。
また、成年後見制度を利用するためには家庭裁判所への申し立てが必要であり、必要書類の収集や申立書類の作成から始まり、後見開始の審判、後見人の選任など、手間と時間がかかります。
さらに、弁護士や司法書士、社会福祉士などの第三者が成年後見人となった場合は、仕事の内容などに応じて報酬を支払う必要があります。
まとめ
今回は家族信託と成年後見制度について解説しました。
家族信託と成年後見制度は、それぞれの目的や状況に応じて活用することが重要であり、資産管理や将来起こり得る相続問題で迷った際には、早い段階で家族や専門家と相談することで負担を軽減できると言えます。
家族信託や成年後見制度についてわからないことがある場合は、司法書士に相談してみることもおすすめです。