親が亡くなった後に相続手続きをしないとどうなる?期限とリスク一覧
親が亡くなられた悲しみの中でも、役所や銀行、税務署などへの各種手続きは進めていかなければなりません。平日は仕事で忙しく、何から手をつければよいかわからないと悩む方は少なくないでしょう。しかし、相続手続きを放置してしまうと、後々深刻なトラブルに発展することがあります。意図せず借金を引き継いでしまう可能性や預貯金の凍結、さらには過料などのペナルティを受けるリスクもあります。
この記事では、「相続手続きをしないとどうなるのか」という疑問に対し、放置した場合に生じるリスクや法律上の期限を具体的に解説します。放置による負担を正確に把握し、早めに対応するための参考にしてください。
相続手続きを放置すると発生する主な5つのリスク
相続手続きをしないまま放置すると、さまざまなリスクが生じます。時間が経つほど親族間の状況は複雑になり、最終的に解決するための時間も費用も余計にかかりやすくなります。知らないうちに借金を引き継ぐこと、口座凍結、相続人の増加による話し合いの難航、過料や加算税などのペナルティなど、放置によって生じやすい代表的な5つのリスクを見ていきましょう。問題を先送りせず、早めに着手することが大切です。
リスク1:借金を引き継いでしまう可能性
相続手続きを放置する大きなリスクの一つは、知らないうちに親の借金を引き継いでしまうことです。相続は、預貯金や不動産といったプラスの財産だけでなく、借入金などのマイナスの財産も引き継ぐ仕組みだからです。
たとえば、親が生前に消費者金融から借り入れをしていたり、他人の連帯保証人になっていたりした場合、何もしないまま放置していると、ある日督促状が自分宛てに届くことがあります。マイナスの財産が多い場合は、借金を引き継がないための手続き(相続放棄など)を家庭裁判所で行う方法があります。しかし、財産調査を行わず長期間放置していると、後述する期限を過ぎて手続きが難しくなることもあります。親が亡くなった後は、なるべく早くマイナスの財産の有無を含めた財産の全容を把握することが重要です。
リスク2:預貯金口座の凍結
金融機関が名義人の死亡を把握すると、預貯金口座が凍結されます。一部の相続人による無断の引き出しを防ぐなど、財産保全のためです。
口座が凍結されると、キャッシュカードでの現金の引き出しはもちろん、公共料金やクレジットカードの自動引き落としもできなくなります。当面の生活費や葬儀費用を親の口座から支払おうと考えていた場合、資金繰りに困ることがあります。なお、金融機関が死亡を把握するまでは凍結されませんが、その状態を放置すると、暗証番号を知る人が無断で預金を引き出してしまうトラブルにつながることもあります。
口座凍結を解除して正当な権利者として払い戻しを受けるには、戸籍謄本など所定の書類を揃える必要があります。書類の準備には手間がかかるため、早めの対応が望ましく、必要に応じて専門家に相談するとよいでしょう。なお、遺産分割前でも一定額の払い戻しを受けられる「預貯金の払戻し制度」もあります。
リスク3:相続人の増加で遺産分割協議が難しくなる
遺産の分け方を決める遺産分割協議をせずに放置していると、手続きが次第に難しくなることがあります。長期間放置するうちに当初の相続人が亡くなり、その相続人の子や配偶者が権利を引き継ぐ「数次相続」が起こるためです。
たとえば、当初は親族数人での話し合いで済むはずだったものが、数年放置した結果、甥や姪、面識のない親族まで話し合いの当事者になることがあります。また、相続人の中に認知症などで判断能力が十分でない方が現れると、本人の意思だけでは遺産分割協議に参加できず、家庭裁判所で成年後見人を選任する手続きが必要になる場合があります。この場合、後見人への報酬が継続的に発生する可能性もあります。関係者が増えるほど全員の合意と実印を集めることは難しくなり、話し合いがまとまらない場合は家庭裁判所での調停に進むこともあります。無用な争いを避けるためにも、話し合いは関係者が少ないうちに進めるのが望ましいといえます。
リスク4:相続登記の義務化による過料のリスク
不動産の相続手続きを怠ると、過料の対象になる可能性があります。所有者不明土地の問題を解消する目的で2024年4月1日から不動産登記法が改正され、相続登記が義務化されたためです。
具体的には、不動産を相続で取得したことを知った日から原則3年以内に登記申請を行わないと、正当な理由がない限り10万円以下の過料の対象となります。「自分は住まないから」「売る予定もないから」といった理由で名義変更を先延ばしにすることは、義務化以降は避けたほうがよいでしょう。さらにこの制度は過去の相続分も対象となるため、親や祖父母の代から名義がそのままになっている土地についても手続きが必要です(経過措置として、施行前に発生した相続は2027年3月31日または相続を知ってから3年のいずれか遅い日までが期限とされています)。過料を避けるためにも、不動産の相続登記は早めに行うことをおすすめします。
リスク5:相続税の無申告・延滞による加算税等
相続税の申告や納付を放置すると、本来の税額に加えてペナルティが課されることがあります。相続税には期限が定められており、これを過ぎると延滞税や加算税の対象となるためです。
具体的には、法定納期限を過ぎると、その日数に応じて延滞税が加算されます。2026年(令和8年)の税率では、納期限の翌日から2か月までは年2.8%、2か月を超えると年9.1%が適用されます(延滞税の割合は年ごとに見直されます)。さらに、期限内に申告をしなかった場合には無申告加算税が上乗せされることがあります。財産を故意に隠したとみなされる悪質なケースでは、重加算税というより重い加算税が課されることもあります。税金関係の手続きは期限を守ることが大切なので、税務署からの指摘を受ける前に早めに対処することをおすすめします。
期限別に解説|相続手続きの期限を過ぎた場合に起こる3つのトラブル
相続手続きには法律で定められた期限がいくつかあります。これらの期限は「知らなかった」では済まされず、過ぎてしまうと相続人にとって不利益が生じることがあります。特に注意したいのが、相続発生後の3か月・10か月・3年という3つの期限です。それぞれの期限を過ぎた場合にどのようなトラブルが起こりうるのか、時系列に沿って解説します。手続きが難しくなる前に、全体のスケジュールを把握しておきましょう。
1.【3か月】を過ぎると原則「相続放棄」ができなくなる
自己のために相続の開始があったことを知った時から原則3か月を過ぎると、借金を引き継がないための相続放棄が難しくなります。この期間内に家庭裁判所へ申述を行わない場合、原則として単純承認をしたものとみなされるためです(民法第915条第1項、第921条第2号)。
単純承認とは、プラスの財産もマイナスの財産もすべて引き継ぐことです。たとえば親に多額の借金があることが死後に判明しても、この3か月の熟慮期間を過ぎていると、その借金を返済する義務を負う可能性が高くなります。ただし、財産が全くないと信じる相当な理由があった場合など、事情によっては期限後でも例外的に受理される可能性があります。マイナスの財産の疑いがある場合は、まず財産調査を急ぎ、家庭裁判所での手続きを優先して進めることが大切です。
2.【10か月】を過ぎると「相続税」の特例が使えず税額が上がることがある
被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10か月を過ぎると、相続税の負担が増える場合があります。相続税を軽減できる「配偶者の税額軽減」や、土地の評価額を下げる「小規模宅地等の特例」といった制度は、原則として期限内の申告が適用の前提となっているためです。
たとえば、期限内に申告していれば特例が適用されて相続税がかからなかったケースでも、期限を過ぎたために特例が使えず、税負担が生じることがあります。さらに、本来の税額に加えて無申告加算税や延滞税がかかることもあります。相続税の負担を抑えるためには、10か月という申告期限を意識しておくことが大切です。なお、期限までに遺産分割が間に合わない場合でも、「申告期限後3年以内の分割見込書」を提出することで、後から特例の適用を受けられる場合があります。
3.【3年】を過ぎると「不動産の相続登記」が過料の対象になりうる
不動産を相続で取得したことを知った日から原則3年を過ぎると、相続登記義務違反として過料の対象になる可能性があります。前述のとおり、2024年4月からの法改正により相続登記が義務化されました。
手続きの流れとしては、正当な理由なく3年以内に登記申請を行わない場合、まず法務局の登記官から申請を促す催告が行われます。この催告にも応じない場合に裁判所へ通知され、最終的に10万円以下の過料が科される可能性があります。注意したいのは、過料を支払っても名義変更の義務がなくなるわけではなく、その後も登記が求められる点です。不動産を取得した際は後回しにせず、早めに司法書士へ相談し、登記手続きを進めることをおすすめします。
なお、遺産分割がすぐにまとまらない場合は、暫定的に「相続人申告登記」を行うことで義務を果たしたものとみなされます。ただし、これは暫定的な措置であり、その後に遺産分割が成立した場合は、成立の日から3年以内に改めて登記を行う必要があります。
銀行や土地の相続手続きを長期間放置した場合のリスク
手続きを数か月から数年放置するだけでもさまざまなリスクが生じますが、これが10年といった長期間に及ぶと、対応がさらに難しくなります。実家の土地の売却が難しくなったり、預金の扱いが変わったり、遺産の分け方で不利になったりすることがあります。ここでは、長期間の放置がもたらすデメリットを財産ごとに確認しておきましょう。
相続を長期間放置した土地はどうなる?売却不可や空き家特例の喪失
実家などの土地の相続手続きを長期間放置すると、不動産の売却や活用が難しくなります。登記簿上の名義が亡くなった親や、さらに前の世代のままである間は、第三者への正規の売却や、担保設定による融資が認められないためです。
また、空き家になった実家を売却する際に譲渡所得から最大3,000万円を控除できる「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」には、期限があります。原則として、相続開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却する必要があります(ほかにも要件があります)。長期間放置するとこの特例が使えなくなることがあります。さらに、管理不全で「特定空家」に指定され勧告を受けると、住宅用地の固定資産税の軽減措置が外れ、固定資産税の負担が増える(最大で約6倍になる)可能性もあります。誰も住まない土地の税金だけを毎年負担し続けることにもなりかねないため、早めの対応が望ましいといえます。
銀行の相続手続きをしないとどうなる?10年で「休眠口座」になる可能性も
銀行の相続手続きをせずに長期間放置すると、預金が「休眠預金」として扱われる可能性があります。休眠預金等活用法に基づき、2009年1月1日以降の取引から、入出金などの異動がないまま10年以上経過した預金等は、民間公益活動を促進するための資金として活用される仕組みになっているためです。ここでの10年は「死亡から10年」ではなく、「最後の異動(取引)から10年」を指す点に注意が必要です。
休眠預金になった後でも、通帳やキャッシュカード、本人確認書類などを窓口に持参すれば、取引のあった金融機関で払い戻しを受けること自体は可能です。ただし、通常より必要書類が多くなり、手続きに手間と時間がかかることが想定されます。また、放置している間に相続人の誰かが認知症になったり亡くなったりして相続関係が複雑になり、預金の解約が難しくなることもあります。大切な遺産をスムーズに受け取るためにも、早めに解約や名義変更の手続きを行うことをおすすめします。
遺産分割協議しないとどうなる?10年経過で「特別受益・寄与分」が主張しにくくなる
遺産分割協議をせずに10年が経過すると、遺産の分け方で特定の相続人が不利になる可能性があります。令和3年の民法改正(令和5年4月1日施行)により、相続開始の時から10年を経過した後の遺産分割では、原則として特別受益や寄与分を反映した具体的相続分による分割ができなくなったためです(民法第904条の3)。
たとえば、生前に親の介護を献身的に行い財産の維持に貢献していた場合(寄与分)や、逆に一部の相続人だけが住宅購入資金などの生前援助を受けていた場合(特別受益)でも、10年を経過した後はこれらの事情が原則として考慮されなくなります。つまり、法定相続分による画一的な割合で分けられることになり、事情によっては長年親に尽くしてきた相続人が報われにくい結果になることもあります。公平で納得のいく遺産分割を望むのであれば、10年という期限を待たず、関係者が元気なうちに早めに協議を進めることが大切です。
相続手続きを専門家に依頼する3つのメリット
ここまで、相続手続きを放置した場合のリスクやペナルティを解説してきました。とはいえ、親を亡くしたばかりの中で、慣れない法律の手続きに取り組み、平日に仕事を休んで役所や銀行の窓口を回るのは、大きな負担になります。負担が大きいと感じたときの選択肢として、相続の専門家に手続きのサポートを依頼する方法があります。ここでは、専門家に依頼することで得られる3つのメリットを紹介します。
1. 戸籍収集から銀行・役所の手続きまでサポート
専門家に依頼するメリットの一つは、事務的な負担を軽減できることです。相続手続きの第一歩として、亡くなった方の出生から死亡までの連続した戸籍謄本を各地の役所から収集する必要があり、さらに金融機関ごとに異なる預金解約手続きを行うなど、平日に動く必要のある作業が多くあります。
専門家に遺産整理のサポートを依頼すれば、平日に仕事を休みにくい方や育児・介護で忙しい方に代わって、書類集めや窓口での手続きを進めてもらえます。ご自身の時間と負担を軽減できるでしょう。特に金融機関の窓口は待ち時間が長く、書類の不備で通い直すこともあるため、サポートを受けることで負担を抑えやすくなります。
2. 司法書士を窓口に、税理士等の専門家とワンストップで連携
相続に強い事務所に依頼すれば、相続に関する手続きを一つの窓口で進めやすくなります。相続手続きでは、不動産の名義変更登記は司法書士、相続税の申告は税理士、年金の手続きは社会保険労務士と、内容ごとに担当する専門家が異なります。
これを個人で別々に手配すると、各事務所で同じ説明を繰り返すことになりがちです。相続実務に対応する司法書士を総合窓口にすれば、司法書士が各士業と連携し、状況に合わせて対応を進めてもらえます。連絡窓口が一つにまとまるため、進捗を把握しやすくなります。なお、相続人間に争いがある場合の代理・交渉は弁護士の業務にあたるため、その際は弁護士と連携して対応します。
3. 年間1,000件超の相談実績で、複雑な案件にも対応
相談実績の豊富な専門家に依頼することで、個人では対応が難しい複雑な案件にも対応しやすくなります。実際の相続では、数世代にわたって放置され古い名義のままになっている不動産や、海外在住・連絡が取れない相続人が含まれるケースなど、個人では対応が難しい問題も少なくありません。
年間1,000件を超える相談実績を持つ当事務所であれば、これまで蓄積したノウハウを活かして手続きを進めることができます。また、感情的になりやすい遺産分割の場面でも、司法書士が書類作成の面から関与することで、手続きを整理しやすくなります。なお、当事務所の司法書士が行えるのは登記申請の代理や書類作成のサポートであり、相続人間の紛争を代理人として交渉・解決することは弁護士の業務にあたります。
まとめ:相続手続きは放置せず、まずは無料相談を
親が亡くなった後の各種相続手続きは、「いつかやればいい」と放置するのは避けたい重要な手続きです。定められた期限を過ぎると、借金の引き継ぎや預金口座の凍結、相続登記義務違反による過料、加算税などのリスクが生じることがあります。特に相続放棄の3か月、相続税申告の10か月、相続登記の3年といった期限は意識しておくことが大切です。しかし、家族を失った悲しみの中で、これらの手続きをご自身だけで抱え込むのは大きな負担になります。
相続手続きを円滑に進めたいとお考えでしたら、まずは当事務所の無料相談をご利用ください。相談実績のある司法書士が窓口となり、ご自身の事務負担を軽減しながらサポートいたします。一人で悩まず、期限が迫る前に早めにご相談ください。
なお、当事務所は埼玉・東京・茨城・群馬の4拠点で、平日20時まで、土日祝日も相談を受け付けています。複数名の司法書士が在籍する体制で、年間1,000件を超える相続相談に対応しています。初回相談は無料です。

