成年後見の手続きの流れ|申立から選任までのステップと必要書類

認知症などにより親の判断能力が低下すると、預貯金の管理や介護施設の契約手続きが難しくなるケースがあります。こうした状況に対応するための制度が「成年後見制度」です。ただ、いざ手続きを始めようとしても、何から手を付ければよいのか分からないという方は少なくありません。本記事では、成年後見の申立先や必要書類、選任までに要する期間など、手続きの全体像を分かりやすく解説します。

成年後見手続きの全体像|申立から選任まで2〜4ヶ月

成年後見制度を利用するには、家庭裁判所への申立が必要です。手続きを開始してから実際に後見人が選任されるまでには一定の期間がかかります。準備をスムーズに進めるためにも、まずは全体のスケジュール感や、期間が延びやすい要因を把握しておくことが大切です。

申立から審判確定までのスケジュール

成年後見制度を利用するには家庭裁判所への申立が必要で、手続きを始めてから実際に後見人が決まるまでには、一般的に2〜4ヶ月ほどかかります。ほとんどのケースはこの期間内に収まりますが、これはあくまで裁判所での審理にかかる時間です。実際にはこれに加えて、申立に必要な書類を集めて準備する期間も必要になります。

手続きの流れとしては、まず家庭裁判所に書類を提出するところから始まります。その後、裁判所による調査や審理が行われ、問題がなければ後見の開始と後見人を決める審判が下されます。審判のあとに不服の申立てがなければそのまま確定し、正式に後見人としての仕事がスタートします。

こうした流れを踏まえると、判断能力の低下に気づいた段階から余裕を持って準備を進めておくことが大切です。

手続きが長期化しやすい3つのケース

成年後見の手続きは、状況によって通常よりも期間を要する場合があります。長期化しやすい主なケースは以下の3つです。
  • 親族間で後見人の選任や制度の利用について意見が対立している場合
  • 本人の親族が多岐にわたり、同意書の回収などに時間がかかる場合
  • 本人の財産状況が非常に複雑で、財産目録の作成や証明書類の収集に手惑う場合
これらの要因がある場合は、裁判所の審理や事前の準備に時間を要するため、想定よりも期間が延びる傾向にあります。

急ぎの財産管理が必要な場合の注意点

本人の口座が凍結されて介護費用の支払いが滞っているなど、急を要する場合であっても、手続きそのものを大幅に短縮することは原則としてできません。成年後見は本人の権利を守るための法的手続きであり、必要な審理を省略することは認められないためです。対応が遅れるほど状況が悪化する恐れもあるため、判断能力の低下を感じたら早めに動くことが望まれます。緊急性が高い場合には、個別の状況を専門家に相談し、とり得る対応を検討することが賢明です。

成年後見の申立に必要な書類と準備のポイント

家庭裁判所への申立には、複数の書類を用意する必要があります。書類に不備があると受け付けてもらえず、手続きが遅れる原因になります。

ここでは、特に重要となる医師の診断書、財産目録、公的機関で取得する書類の3つに分けて、準備のポイントを解説します。

医師が作成する診断書の依頼方法

成年後見の申立には、本人の判断能力の程度を示す医師の診断書が必要です。まずは本人の主治医や、普段の様子をよく知るかかりつけ医に相談して作成を依頼します。家庭裁判所が定める成年後見用の様式(診断書・診断書付票)があるため、事前に裁判所のウェブサイトなどからダウンロードして医師に渡すとスムーズです。主治医がいない場合は、精神科や心療内科、高齢者医療を扱う医療機関を受診することになります。

財産目録・収支予定表の整理方法

裁判所に提出する「財産目録」と「収支予定表」は、本人の財産を適正に管理するために内容を正確に記載する必要があります。財産目録には、預貯金の残高だけでなく、不動産や有価証券、生命保険などの有無も記入します。収支予定表には、年金などの収入と、医療費や介護費などの支出を記載します。通帳のコピーや固定資産評価証明書といった裏付け資料もあわせて提出するため、日頃から領収書や明細を整理しておくと準備が進めやすくなります。

戸籍謄本など公的機関で取得する書類一覧

本人の身分関係や居住地を証明するために、役所や法務局などで各種書類を取得します。主に必要となる書類は次のとおりです。

取得場所 必要となる主な書類
市区町村役場 本人と後見人候補者の戸籍謄本、住民票の写し
法務局 本人の「登記されていないことの証明書」
税務署・役場 確定申告書の控え、住民税課税証明書など

「登記されていないことの証明書」は、本人がすでに後見等を受けていないことを確認するための書類で、法務局(東京法務局後見登録課、または各法務局・地方法務局の本局)で取得します。これらの書類には有効期限(一般的には発行から3ヶ月以内)が設けられている場合が多いため、提出時期から逆算して集める必要があります。

申立から選任までの5つのステップ

成年後見の手続きは、大きく「準備」「申立」「審理」「選任」の流れに分かれており、各段階で行うべきことが決まっています。ここでは、順を追って具体的な進め方を確認します。

STEP1:申立先(家庭裁判所)の確認と事前相談

最初に行うのは、手続きの窓口となる家庭裁判所の特定です。成年後見の申立先は、支援を受ける本人(親など)の住所地を管轄する家庭裁判所と定められています。多くの裁判所では、手続きの流れをまとめたパンフレットの配布や事前相談を行っています。管轄違いによるタイムロスを防ぐためにも、まずはどこの裁判所が対象になるのかを確実に確認しておきましょう。

STEP2:必要書類の収集と後見人候補者の指定

管轄の裁判所を確認したら、申立書一式を入手して必要書類の収集と作成を始めます。あわせて、誰を成年後見人の候補者とするかを決め、申立書に記載します。候補者には親族を指定することが一般的ですが、必ずしも候補者が選ばれるとは限らない点に留意が必要です。書類の書き方や候補者の選定に迷った場合は、この段階で専門家に相談しておくと、その後の手続きが進めやすくなります。

STEP3:家庭裁判所への書類提出

すべての書類と添付資料が揃ったら、管轄の家庭裁判所へ提出して正式に申立を行います。提出方法は、窓口へ直接持参する方法と郵送のどちらでも可能です。窓口へ持参する場合は、その場で書類の不備や記入漏れを確認してもらえるため、その後のやり取りを減らせる利点があります。郵送の場合は、追跡が可能な方法を利用し、提出前にコピーを手元に残しておくと安心です。

STEP4:調査・鑑定(必要な場合)

書類が受理されると、家庭裁判所による審査が始まります。裁判所調査官から、申立人や後見人候補者、本人に対して面接や事情の聞き取りが行われるのが一般的です。また、本人の判断能力をより客観的に判断するため、裁判所が必要と認めた場合には医師による鑑定が実施されます。もっとも、実際に鑑定が行われるのは全体の一部にとどまり、最高裁の統計(令和6年)では終局事件のうち約3.8%です。鑑定が実施される場合は数週間〜1ヶ月程度の期間を要することが多く、その有無が全体の期間に影響することがあります。

STEP5:審判の確定と後見登記

裁判所が後見の開始を認め、後見人にふさわしいと判断した人物を選任すると「審判」が下されます。審判の結果は「審判書」という書面で申立人と後見人に通知され、受け取ってから2週間が経過すると審判が確定します。審判が確定すると、家庭裁判所から法務局へ通知が行われ、後見人の権限などが登記されます。登記が完了し「登記事項証明書」を取得できるようになって初めて、後見人として金融機関などでの具体的な手続きが可能になります。

手続きを進める前に知っておきたい3つの注意点

成年後見制度は、本人の財産や権利を守るための仕組みであり、厳格なルールが設けられています。後から「思っていたのと違った」とならないために、事前に把握しておきたい注意点を整理します。

申立後の取り下げは原則不可

家庭裁判所に成年後見の申立を行ったあとは、原則として自由に取り下げることができません。取り下げには家庭裁判所の許可が必要とされており、これは制度の公益性や本人保護の観点によるものです。手続きの途中で「やはり身内で解決したい」と思っても、裁判所の許可がなければ取り下げは認められません。特に、後見人候補者への不満を理由とする取り下げは認められにくいとされています。そのため、本当に制度を利用すべきかを、事前に家族間で十分に話し合っておく必要があります。

親族間で意見が対立した場合の影響

後見人の選任や本人の介護方針をめぐって親族間で意見が対立していると、手続きに影響が及びます。裁判所の審理が慎重になり、双方への聞き取りなどで選任までの期間が延びる原因になるためです。また、対立がある場合は、中立性の観点から親族が後見人に選ばれにくくなる傾向があります。手続きを円滑に進めるためにも、事前に親族間で認識をすり合わせ、できる限り合意形成をしておくことが望まれます。

後見人は必ずしも希望通りに選ばれない

申立書に後見人の候補者を記載しても、家庭裁判所が必ずしもその人を選ぶとは限りません。実際には、親族が後見人に選ばれるケースはそれほど多くなく、司法書士や弁護士、社会福祉士といった専門職が選ばれることが少なくありません。

特に、本人の財産が多い場合や、親族の間で意見が分かれている場合には、中立的な立場の専門職が選ばれやすい傾向があります。裁判所が誰を選んでも、その決定には従う必要があります。「身内が後見人になるつもりで申し立てたのに、知らない専門職が選ばれた」ということもあり得るため、こうした仕組みをあらかじめ理解しておくと安心です。

成年後見の手続きを司法書士に依頼するメリット

ここまで見てきたとおり、成年後見の手続きは提出書類が多く、裁判所のルールに沿った的確な対応が求められます。仕事や家事と並行して個人でこれらを行うのは負担が大きくなりがちですが、司法書士に依頼することでその負担を軽減できます。

書類作成から裁判所対応まで一括サポート

司法書士は、裁判所に提出する書類作成を業務とする専門家です。財産目録の作成から、戸籍謄本などの公的書類の収集、医師への診断書作成依頼に関するアドバイスまで、申立に必要な一連の準備をサポートできます。正確な書類を整えることで、裁判所からの差し戻しや追加書類の要求といった手戻りを防ぎやすくなり、不慣れな書類手続きにかかる時間と負担の軽減につながります。

専門家に任せることで得られる3つの安心

成年後見の手続きを司法書士に依頼することで、以下のような3つの安心感を得ることができます。
  • 専門家が関与することで、書類の不備による手続きの遅延を防げる安心
  • 親族間の調整や裁判所からの問い合わせに対して、適切な助言を受けられる安心
  • 選任後の財産管理や家庭裁判所への定期報告など、将来の運用も見据えた相談ができる安心
手続き中だけでなく、制度が始まった後の見通しもあわせて確認できるため、子世代の大きな心の支えになります。

まずは無料相談から始める流れ

明成法務司法書士法人では、成年後見に関する初回の相談を無料で受け付けています。まずは相談を通じて、親の現状や困りごとを伝え、本当に成年後見が必要な状況なのか、家族信託など他の選択肢がないかを確認するとよいでしょう。依頼を決める前に、費用や手続きにかかる期間の目安について説明を受けられるため、判断の材料にもなります。

まとめ:成年後見の手続きは早めの準備と専門家への相談が鍵

親の認知症などで必要となる成年後見の手続きは、申立から審判の確定までにおおむね2〜4ヶ月の期間を要し、多くの専門的な書類が必要です。申立後の取り下げには裁判所の許可が必要であることや、希望どおりの後見人が選ばれるとは限らないといった注意点もあります。負担を減らしスムーズに進めるためには、事前の準備と専門家への相談が大きな力になります。家族だけで抱え込まず、まずは司法書士への相談から一歩を踏み出してみてください。

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