遺言書があってもトラブルになるケースとは?

2026年7月3日

遺言書があってもトラブルになるケースとは?

被相続人の意思を示す遺言書は、相続において強い法的効力を持ちます。
そのため、遺言書を残すことは相続におけるトラブルを抑制するために有効な手段です。
しかし、遺言書があったとしてもトラブルになるケースが存在します。
今回は、遺言書がある場合に生じえるトラブルと、その対策について解説します。

遺言書の有効性を巡るトラブル

遺言書が存在していても、その遺言書の有効性について争いになることがあります。
遺言書の有効性が疑われる主な要因は、以下の通りです。

遺言能力の欠如

有効性の証明が難しくなるのが、認知症などによって遺言を作成した時点での遺言能力を疑われるケースです。
この場合、裁判において、当時の医師の診断書や本人の生活状況などが精査されることになりますが、明確な証拠がなければ数年間にわたる訴訟となる可能性もあります。

形式上の不備

自筆証書遺言は、手軽に作成できる反面、民法が定める形式要件を欠くと遺言書全体が無効になる恐れがあります。
たとえば、夫婦で1枚の紙に連名で書いた遺言書は共同遺言の禁止というルールに抵触し、無効となります。

遺言内容によって生じるトラブル

形式が整っており、有効な遺言書であったとしても、その遺言の内容が相続人の正当な権利を侵害している場合、トラブルの原因となります。
具体的に、次のような遺言内容は問題を引き起こす可能性があります。

遺留分の侵害

日本の法律には遺留分という、兄弟姉妹以外の法定相続人に認められた最低限の取り分を保証する制度があります。
遺言書で特定の者にすべての財産を継がせると指定したとしても、遺留分を持つ相続人は財産を受け取った人に対して金銭的な対価を請求することができます。
この請求が行われると、財産を受け取った側は、遺言書の内容に関わらず支払いを拒むことができません。

曖昧な財産の特定

遺言書で言及されている財産の特定が曖昧だと、その解釈を巡って相続人間での対立が生じる可能性があります。
財産については詳細まで明記されていなければ、銀行や法務局での手続きが受理されないおそれもあります。

特別受益や寄与分の無視

遺言書で、生前に行われた多額の援助である特別受益や、長年の介護による貢献を考慮する寄与分について言及されていない場合には、特定の相続人が不公平感を持つことがあります。
不公平感が生まれると、その後の手続きにおいても協力的な姿勢が望めなくなる可能性が高まります。

遺言執行に関するトラブル

遺言書に認知や推定相続人の廃除といった身分に関する事項が記されている場合、遺言執行者がいなければ遺言を執行することができません。
遺言執行者が指定されていない場合や、指定された人が就任を拒絶した場合には、家庭裁判所に選任を申し立てる必要があります。

遺言書の複数存在によるトラブル

遺言書の種類や保管方法が、被相続人死後の混乱を増幅させることがあります。
たとえば、遺言書が複数存在している場合です。
本人が時期をずらして複数の遺言書を書き、それらの内容が矛盾している場合、法律上は日付が新しいものが優先されます。
しかし、相続人の利害関係は対立しやすくなり、トラブルが発生する原因となります。

遺言書の種類によるトラブル

自筆証書遺言は自宅で保存することも少なくありません。
この場合、遺言書の発見が遅れることがあります。
すでに相続が終わった後に遺言書が発見されると、すべての手続きをやり直さなければならなくなるリスクが生じます。

遺言書によるトラブルのリスクを下げる対処法

遺言書に記した意思を確実に実行させるために、以下の対策を講じることを検討してください。

公正証書遺言を活用する

遺言を残す際には、公証役場で公正証書遺言を作成することが推奨されます。
公証人が本人の意思と本人確認を厳格に行った上で作成するため、形式不備による無効のリスクを回避できます。
また、原本が公証役場に保管されるため、紛失や改ざんの心配がありません。
自筆証書遺言を法務局で保管する自筆証書遺言書保管制度の利用も、遺言書の紛失や改ざんを防ぐために有効です。

遺留分を考慮した配分設計

一定の法定相続人に保障された最低限の遺産取分である遺留分が侵害された場合、原則として多くの遺産を受け取った相続人は金銭で侵害額を支払わなければなりません。
そのため、特定の者にすべての遺産を相続させたい場合でも、その他の相続人の遺留分を無視せず、少なくとも遺留分相当額の金銭を渡せるような配慮を検討してください。
遺言書の内容を遺留分を考慮したものにすることで、遺留分をめぐるトラブルのリスクを下げることができます。
また、遺留分侵害額請求が発生した際に支払えるよう、生命保険の受取人を特定の人にすることも有効です。

専門家を遺言執行者に指定する

遺言書によるトラブルのリスクを下げる方法として、遺言執行者を司法書士のような専門家に依頼することが考えられます。
親族が遺言執行者になると手続きの透明性に疑念が生じがちになりますが、司法書士であれば第三者の立場から透明性の高い手続きを進めることができます。
複雑な不動産登記を代行することで、相続人の負担が軽減されることも期待できます。

まとめ

今回は、遺言書があってもトラブルが生じるケースと、その対策について解説しました。
遺言書をめぐる将来的なトラブルを防止するためには、厳格な形式要件をクリアしていることやあらかじめ対策を講じておくことが欠かせません。
遺言書の作成方法に不安を感じたら、司法書士に相談することを検討してください。