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遺留分とは│注意点と遺留分侵害額請求
2025年9月25日
遺留分とは│注意点と遺留分侵害額請求
故人の財産を相続するとき、特定の相続人には最低限の権利が保障されます。
これを「遺留分」と言い、遺言書や生前贈与などの影響で遺留分より少ない額しか相続できなかったときには、多く相続した方等へ足りない分の金銭を請求できます。
この記事では、遺留分について詳しく解説します。
相続の仕組み
亡くなった方の財産は、通常、法定相続人が相続します。
法定相続人とは法律で定められた相続できる人であり、故人の配偶者は必ず該当します。
そのほか、①故人に子どもがいる場合には子ども、②子どもがいない場合には両親などの直系尊属、③両親等の直系尊属もいない場合には故人の兄弟姉妹が順繰りに法定相続人に該当していきます。
遺留分
遺留分とは、遺言書に従って相続する場合や、個人が生前に一定の贈与をしている場合に、特定の相続人に認められる最低限取得できる遺産の割合です。
遺言書や生前贈与がなく、相続人間の遺産分割協議によって相続内容を決める場合には、遺留分は認められません。
遺留分は、法定相続人のうち、①配偶者②子ども③両親などの直系尊属のみに認められています。
故人の兄弟姉妹には認められないため注意が必要です。
遺留分は相続人の立場や組み合わせによって変わります。
相続人が直系尊属のみである場合、遺留分を算定するための財産の価額(以下、「財産額」といいます)の3分の1が遺留分として認められます。
それ以外の場合(配偶者、子どもが相続人の場合や、配偶者と直系尊属が相続人となる場合)は、財産額の2分の1となります。
相続人が複数いる場合、各相続人に認められる遺留分は、財産額にこの遺留分割合と対象者の法定相続分をかけて計算します。
たとえば財産額が9,000万円であり、相続人が故人の親のみでるとき、親に認められる遺留分は3,000万円です。
片親のみ存命の場合はその方の遺留分が3,000万円となりますが、両親がともに存命の場合は遺留分を2人で等分し、それぞれ1,500万円ずつ認められます。
遺言書にしたがって相続を行った際や、一定の生前贈与により遺産額が減少した影響で、遺留分よりも少ない額しか相続できなかった場合には、遺言書により多く相続した方や贈与を受けた方へ足りない分の金銭を請求できます。
これを「遺留分侵害額請求」といいます。
遺留分侵害額請求
遺留分よりも少ない額しか相続できず、その相続に納得できない場合には、遺言書により財産を取得した人や、対象となる生前贈与を受けた人に対して遺留分に足りない額(これを「遺留分侵害額」と言います)の支払いを求められます。
遺留分侵害額の支払いを求められた人は、遺留分侵害額を金銭で支払うことになります。
しかし相続財産が不動産しかない場合など、金銭で支払うことが難しい場合もあります。
このようなときには両者の合意のもと、金銭以外での清算も可能です(代物弁済等)。
遺留分侵害額を請求する方法として特別な決まりはありません。
しかしトラブルを避けるためにも、内容証明郵便によって請求すると安心です。
当事者同士の話し合いで解決できない場合には、家庭裁判所の調停手続きも利用できます。
調停を利用する際には、必要に応じて資料の提出などを行ってください。
遺留分侵害額請求には期限があります。
遺留分が侵害されたことを知った日から1年以内に請求しなければいけません。
また遺留分の侵害を知らなかった場合にも、相続開始から10年を経過すると請求する権利を失ってしまうため注意が必要です。
ただし、遺留分の権利を行使するかどうかは相続人の自由です。
故人の意思を尊重したい場合や遺言内容に納得しており、請求を希望しない場合などは、請求しなくても構いません。
遺言書の作成時には遺留分に注意する
遺留分を侵害する内容の遺言や生前贈与をした場合、それにより財産を受け取った方が、相続人から遺留分侵害額の請求を受ける可能性があります。
たとえば子どもなど法定相続人がいるにも関わらず、特定の施設へ遺産の全額を遺贈する旨の遺言書があった場合、子どもはその施設に対し自身の遺留分に相当する金銭を支払うよう請求できます。
そのため、遺言書の作成時には、他の相続人に対し遺留分に相当する財産を相続させるようにしたり、受遺者が遺留分に相当する金銭の支払いが発生することを考慮した対策を講じたり、といった点に注意して作成すると良いでしょう。
遺留分が認められないこともある
相続する権利を失った場合や、遺言書や生前贈与がない場合には、たとえ故人の配偶者や子どもであったとしても遺留分は認められません。
たとえば自ら相続を放棄した場合、相続する権利と同時に遺留分の権利も失います。
相続を有利に進めるため遺言書を偽造したり、脅迫などによって遺言書の内容を変更させたりといった行為を行った相続人も、相続人としての資格がはく奪され、遺留分も認められない可能性があります。
まとめ
この記事では、相続における遺留分について解説しました。
遺留分とは遺言書にしたがって相続する際等に、故人の兄弟姉妹を除く法定相続人に認められた、最低限受け取ることができる遺産の割合です。
遺言の内容や故人の生前贈与により遺留分より少ない額の遺産しか受け取れなかった場合には、その遺言や生前贈与により財産を多く取得した方に対して侵害額を金銭で支払うよう請求できます。
遺留分はご自身が相続人となった場合の他、遺言書を作成したり、贈与をする際にも留意すべきポイントとなります。
遺留分についてのご相談は司法書士までご連絡ください。